危険

1度目のセクハラの被害で、私は、裁判をしました。
行為そのものが裁判をすることを決めさせたのではありません。
その後の対応に大きな憤りと理不尽なものを感じて裁判をすることを決めました。

A先生は、カルト宗教と言われている宗教の地方幹部でした。
その宗教では、男性と女性の性に関しては、異常なまでの厳しい規律があります。
後で知ったことですが、仕事とはいえ、男性と女性が二人きりで部屋にいる場合は、ドアを閉めない、また、車で移動する場合、男性が運転する場合には女性は助手席に座らない、その逆もです。
A先生は、行為を認めました。もちろん、ある程度の言い訳というかA先生の主張はありましたが、行為そのものは認めた上での裁判の進行でした。
セクハラ裁判では、珍しい例だと思います。

セクハラ裁判が長引く要因の一つに、被告の男性が行為を否定することがあります。
確かに、セクハラの定義は『女性が不愉快と感じる言動』ですが、セクハラの加害者と言われ、それを否定したい気持ちも理解できます。
また、セクハラの定義の『女性が不愉快に感じる言動』で、被害女性が不愉快と感じたことを認識できないということもあるでしょう。
女性側が強い拒絶を示したといっても正確に、それが数字のように明確に第三者に示すことができるものでもありません。
目撃者がいなかった場合などは、とりあえず、セクハラを認めたくないという意識が働いてしまうことも当然なことかもしれません。

平成18年4月15日に社会保険労務士会の会合の場で、I口から受けた猥褻行為の被害は、人前ですので、目撃者もいました。
I口は、セクハラの常習犯でした。
人前で臀部を下から上に触るという猥褻行為ですので、セクハラの定義『女性が不愉快に感じる言動』を持ち出すまでもないことでした。

他の被害女性のセクハラ被害の話や、パワハラの話でも、1次被害そのものに強い憤りを感じるのではなく、その事を問題提起したときや被害を『声』にしたときに、そして、それ以後の対応に大きな憤りと理不尽なものを感じています。

私もそうです。
平成18年4月15日のI口の猥褻行為も許せるものではありませんが、それ以上に強い憤りを感じているのは平成18年4月26日のM下の発言、セカンドハラスメント(セクハラの2次被害)と、その後の対応です。

3年間、沈黙していました。
でも、その間、セクハラの問題を避けることはできませんでした。
社会保険労務士という仕事柄、セクハラやパワハラだけではなく、相談を受けたときの対応の仕方を誤ったときの危険性を感じていたのだと思います。

自分の一言が、自分の対応が後に大きな災いの引き金となることを、私自身のこと、そして、セクハラやパワハラの被害女性や被害者と接することで感じました。

『被害者は、ただそこにいるだけで災いが降りかかってくるのであって、原因は常に加害者にあるのです。』
被害女性や被害者は、自らの意思で、この災いを避けることはできません。
被害女性や被害者から、相談を受けた者、問題提起をされた者も、自らの意思で、避けることはできない問題です。
そして、その対応を誤ったとき災いとなってしまいます。

セクハラやパワハラの対応で大切なことは、
1.被害者が誰であるのかではない、加害者が誰であるのではない。
2.加害者の行った『行為』が『良い事なのか、悪いことなのか』に視点を置く。
3.受けた側の主観を重視する。

被害女性や被害者の『声』を大切にしなければセカンドハラスメントの加害者になってしまいます。

I口のように人前で、猥褻行為に及ぶ方が稀ではないでしょうか。
叱咤激励とパワハラは紙一重ではないでしょうか。

パワハラの被害者のブログを見ていて、こんな言葉にも傷つき、そして、セカンドハラスメントと感じているのだと思うことが多々あります。
被害者がパワハラと感じている以上、セカンドハラスメントと感じている以上、それを否定することに意味があるのでしょか。

セクハラの被害女性が、セクハラの定義『女性が不愉快と感じる言動』で、セクハラと感じている以上、それを否定することに意味があるのでしょうか。

セカンドハラスメント(セクハラの2次被害)と感じている以上、それを否定することに意味があるのでしょうか。

加害者が行為を否定したとき、行為を認めなかったとき、どうすればよいのでしょうか。
目撃者もいません。

被害を受けた側にとっては耐え難いことであったとしても、被害を与えた側は些細なこととしか認識できなかった場合は、どうすればよいのでしょうか。

加害者が行為を認めたが、そのことが他に与える影響が大きいときは、どうすればよいでしょうか。

冤罪の可能性はないでしょうか。

相談対応担当者となってしまった者は、大きなリスクと隣り合わせになってしまいます。

自らがセクハラ行為や猥褻行為をしたわけではありません。
しかし、その対応が与える影響の大きさは、私たちが思っている以上に大きいものです。

セカンドハラスメント(セクハラの2次被害)の問題は、社会保険労務士にとっては必要不可欠な取り組まなければことだと強く感じました。

セカンドハラスメント(セクハラの2次被害)の加害者は、1次被害の加害者と同罪です。
セカンドハラスメント(セクハラの2次被害)を与えることなく、そして、真実を見極めるには、それなりの訓練が必要ではないでしょうか。

被害女性の問題ではなく、加害者や加害者が属する組織の問題です。

『ひめみこ』さんの言葉です。
『セクハラ、セクハラと騒いでる人と、パワハラ、パワハラと騒いでいる人、本当の被害者を一緒にしないで欲しい。』

セクハラやパワハラの問題に真剣に取り組んでいる被害女性や被害者は、本当の被害者です。
加害者と加害者が属する組織に対して、大きな憤りを感じ、理不尽さを感じ、『次のために』と願い、それぞれの形で戦います。

セクハラやパワハラの相談対応担当者には、本当の被害者を見極めること、真実を見極めること、そして、被害女性や被害者、加害者と加害者が属する組織の双方が納得できる形の対応を求められれています。

その対応を誤ったときの危険を痛いほど感じるから、戦うことを決めたのだと思います。
一人で取り組める問題ではありません。

被害女性や被害者
被害女性や被害者の痛みを理解できる人、理解しようとする人
加害者や加害者が属する組織

『次のために』は、それぞれの立場で、それぞれの思いで取り組まなければならないと強く思っています。

ですから、あの手この手と社会保険労務士会に問題提起しているのでしょう。
I口は、民生委員でもありましたから、民生委員の猥褻行為、民生委員がセクハラの常習犯というのも、大きな問題です。

被害女性や被害者は『進化』します。
最初は、気がつかなくても、いつか、問題の本質に気がつきます。
セクハラはパワハラ、セカンドハラスメントより加害者が属する組織にとっては、大きな問題に目が行くことがあります。

加害者の属する組織にとっては、これも、また、危険なことではないでしょうか。